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一般社団法人 ICT経営パートナーズ協会 メルマガ (第89号)
http://www.ictm-p.jp/
2021/5/19
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【目 次】
1.巻頭コラム 『中小企業のためのICT投資/効果評価の基本的な手順 』
ICT経営パートナーズ協会監事
青柳六郎太
2.ニュース・お知らせ: 今号は有りません
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巻頭コラム 『中小企業のためのICT投資/効果評価の基本的な手順 』
ICT経営パートナーズ協会監事
青柳六郎太
本稿執筆の目的
(1)ICTの普及には目覚ましいものがあるが、「金食い虫」とか、「経営には役
立たない」とか数十年良い評価は頂いていないのが実情だ。投資効果を評価
する方法についても、適切な方法が確立し、活用されているとは思えない。
(2)経営者や利用者に、満足していただくことが積年の課題であるが、筆者にお
いても「これが良い方法です」とご提案出来るものがあるわけでもない。
(3)そこで、温故知新に倣い、今までの仕事を振り返り、果たしてお役にたった
のかはわからないが、この30年内の執筆経験で内容をまとめてみたもので、
お役に立つことがあれば見直していただければ幸いである。
(4)DXが叫ばれる中で、方法論をご評価いただくつもりはなく、皆様がそれほど手
間暇かけないで、すぐ取り掛かれる成果物を提示させていただきたい。使えな
ければ、それまでの話で棄却していただいて結構です。
(5)なお、小生にとっても誠に古い考え方でまとめていますが、中小企業様から
、この内容で良いから情報投資効果を評価してみていただきたいというお話
があれば、他にやる人がいなければという前提で、このやり方を愚直に繰り返
して実施しているのが現状です。
ICT資産(B/S科目)/コスト(P/L科目)対象
1.ユーザ企業のICT資産/コストの評価視点
視点 評価目的
(1)ICTの経営有効性評価 ・企業内部視点では企業価値向上
・企業の外部対応では金融機関への融資
折衝や、取引先への経営品質訴求など が主体
(2)ICTのライフサイクル適正評価 ・機能有効性陳腐化防止
・陳腐化に伴う過剰保守コスト発生防止
・システム障害リスク最小化
(3)節税によるキャッシュフロー向上
・ICT投資や運用費用の損金計上最大化
(4)ICT投資計画的確化 ・これからの投資見積精度向上
・ICT投資キャッシュフロー回収可視化
(5)ソフトウエアの使用義務遵守や ・権利やセキュリティー維持のために的確
セキュリティーの維持 にICT資産が把握されているか?
2.ユーザにおけるICT資産/コスト評価の必要性
(1)投資効果を評価する目的
ICT投資の目的区分による会計/税法に基づく計上科目の確定
会計や税務で否認されないために
進め方
・有形・無形固定資産に計上する、あるいは
・費用(会計)・損金(税法)計上をするには、事前に利益やCF創造の
効果可否について、監査人(上場企業グループの場合)や税務当局への
確証として組織的な意思決定を取締役議事録などに記録する必要がある。
(2)投資効果を評価する目的
減損会計の適用
※税法は減損会計は適用外に注意
進め方
ICT資産による事業の将来キャッシュフロー獲得に対する評価を通じて
、簿価との比較で減損や減損戻入の適格な計上を行う。
(3)投資効果を評価する目的
投資意思決定
進め方
現有ICT資産の機能的陳腐化による保守コストの増加が元来意図した投
資効果を損なわないように機能改修や再投資の意思決定を行う。
投資によるCF創造高と運用支出による将来のキャッシュフロー回収高の
大小を評価する。
(4)投資効果を評価する目的
複数投資案件の優先順位を決定する
進め方
現在/将来の各ICT資産の経営貢献効果を
・戦略貢献(業務速度向上など)
・マネジメントリスクの回避貢献
・業務効率化貢献
(上記は筆者の一つの仮説にすぎませんが・・・)
など企業に最適な目的要素をICT専門家が提案し関係者が合意し、貢献
度を適格に合意評価する。
経営貢献度と、一方、機能的・技術的陳腐化度の2者を評価して、経営効
果が高く、陳腐化度が大きいもの(幾何平均等)を基準値にして数量指標
で設定する。
ICT資産(B/S)/費用(P/L)評価・測定の必要性まとめ
・ICT投資の目的区分による会計/税法に基づく計上科目の確定
・減損会計の適用可否を判定(減損会計は上場企業グループが対象)
・ICT投資実行意思決定
・複数投資案件の優先順位を決定する
3.ICT投資をしない場合の機会損失評価について
世間を見ると、ICT投資の成功例や経済効果ばかり追い求めて、結局投資を
惜しみ、何もしないで終わってしまう意思決定があまりにも多く見受けられる
。これでは、ICTの適用は中々進まないだろう。現場の利用者も経営者に忖
度して、現場に精通している利用者も経営者に忖度して、意思決定を後押し
することも控えめになってしまう。効果があるのが明確にわかっているのに
、投資額をすることは企業の発展に貢献する姿勢と言えるのであろうか。投
資額を惜しむことは企業の発展を阻害する姿勢をとっているという評価だっ
てあり得るのだ。この章では、ICT投資をしない場合の逆効果を仮説的に挙
げてみたい。
3.1
以下参考にICT投資を実行しない場合に起こり得る基幹業務全般の仮
想損失を洗い出していただきたい.ICT化の良い話ばかりはするがベンダーは、
耳に痛い話 はしないものだ
(1)売上成長率低下 →CRM、SFA(顧客訪問)視点→粗利の減少
(2)顧客リピート率の低下→同上
(3)受注率の低下 →同上
(4)配送効率の低下 →物流システム視点→物流費の増加
(5)債権貸倒率の増加 →与信管理視点 →貸倒損失増加
(6)納期満足率の低下 →在庫・生産・購買 各管理視点→粗利の減少
(7)在庫回転日数の悪化 →在庫・物流各管理視点→資金繰り悪化、融資枠/借
入利率の増加
(8)労働生産性の低下 →DX化推進・情報統合視点→営業利益低下
(9)不良品増加 →生産・品質各管理及び情報共有視点→粗利の減少
(10)材料廃棄増加 →在庫管理、賞味期限管理の視点→営業利益低下
3.2複数シナリオによる仮想キャッシュフロー予測例示
将来の予測においては、楽観的であろうが悲観的であろうが事業環境の予測を楽
観的か悲観的か現状延長かの3つのシナリオで予測を行うのが適切であろう。
そこで、関係者の投票によって3つのケースのある程度合意できる確率に基づ
く期待値比較が常識的な方法論だと思われる。
4.ICTコスト診断と手順
それでは、これから提案するICTコスト診断の進め方を先にまとめてみよう。
今までに示したICTコストの診断の進め方を手順としてまとめてみる
(1)ICT資源別資産/費用とライフサイクル調査
(2)ICT資源別適用ビジネスプロセス調査と資産/費用配賦
(3)ビジネスプロセス別ICT単位コストと業務量単位コストと期間増減分析
(4)ICT資源別適用ビジネスプロセスと経営効果相対的重要度評価
(5)適用ビジネスプロセスシステム別機能有効性評価と要因分析
改修すべき優先度別ビジネスプロセスシステム(アプリケーションソフト
ウエア)抽出
(6)改修すべき優先度別ITインフラ(ハード、ネットワーク、共通ソフト
など)抽出
以下項目説明に於いて分析フォーマットは割愛させて頂きました。
4.1ICT資源形態別資産/費用とライフサイクル調査
・ICT資産の形態別(ハード、ソフト、サービスなど)内訳を明確化
・投資対象ICT資産の投資ライフサイクルステージを明確化
・調査の趣旨を理解してもらう
・固定資産管理台帳、リース契約台帳、自動引落明細、会計帳簿、契約書など
4.2ICT資源別適用ビジネスプロセス調査と資産/費用配賦
・ICTの投資対象ビジネスプロセス別内訳を明確化
・調査の趣旨を理解してもらう
・組織別資産配置、資産使用担当者確認、ソフトウエア機能一覧、ソフトウエ
ア別使用実績調査(システム稼働ログから分析)、コンサルタントによる論
理的決定
4.3ビジネスプロセス別ICT単位コス トと業務量単位コストと期間増減分析
・ICTの投資対象ビジネスプロセス別取引単価を可視化
・調査の趣旨を理解してもらう
・資料源
画面別入力件数、伝票発生件数、請求明細件数、出荷明細件数、検収明
細件数、支払明細件数、取引先件数、在庫件数、棚卸件数、員数など
4.4ICT資源別適用ビジネスプロセスと経営効果相対的重要度評価
・ビジネスプロセスの経営貢献重要性評価
・各ビジネスプロセスの価値属性を
業務速度向上による競争優位確立、マネジメント強化によるリスク回避、省
力化によるコスト削減などに分類
・分類が困難な基盤的プロセスは、最も貢献度が高い関連プロセスと関係づけし
、その区分で分類する
・上記についての相対評価を実施時の事業環境から決定する
・一つのビジネスプロセスが、複数の価値属性に跨る場合は、加算せず、いず
れか大きい数値を採用し、過重な相対評価差異発生を回避する
4.5適用ビジネスプロセスシステム別機能有効性評価と要因分析
改修すべき優先度別ビジネスプロセスシステム(アプリケーションソフト
ウエア)抽出
・改修や再構築の重要な対象となる現行ICTの見極めを行う
・ビジネスプロセス別ICT資産別機能有効性評価視点を合意する
経営/プロセス支援有効性、ユーザ運用性、業務品質信頼性など・・・・
(講師仮説)
・各機能有効性の有効度を関与先企業の事業環境に対応して比較定量化(5ラ
ンク評価等)し、総合点を幾何平均で採点する
・陳腐化の要因を類型化しコード入力する
・ビジネスプロセス重要度×機能有効性陳腐化度幾何平均点で改修重要度を評
価する
4.6改修すべき優先度別ITインフラ(ハード、ネットワーク、共通ソフト等)
抽出
・優先度の高いビジネスプロセスシステム(アプリソフト)改修を企画すると
同時に、基盤となるハードウエア/NW/共通ソフト等のインフラの改修プ
ライオリティーを明らかにする
・複数のビジネスプロセスシステムの共通基盤となるインフラを特に注意する
以上
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